豊洲市場

無味乾燥なゴミ

偉大な大国「中国」との付き合い方を考える

20年前の日本と中国

テレビでも有名な莫邦富MoBangfu先生の著書、『日本企業はなぜ中国企業に敗れるのか』(2002)を図書館でたまたま見かけた。

 

白物家電は全て中国メーカーを使用し、生鮮食品以外は何の抵抗もなく中国産を選ぶ私には、とても興味をそそられる内容だった。

 

ジャパン・アズ・ナンバーワン』と言われたバブル期を知らない世代の私にとって、中国は限りない発展を続ける巨大な隣国であり、憧れの対象でもある。

 

はじめて中国にいき、上海浦東国際空港から上海トランスラピッドに乗ったときは、鉄道が好きなこともあって、興奮と感動で胸がいっぱいになった。

 

それから10年近くが経ち、サムスン電子に先駆けて「折り畳みスマホ」を開発したRoyole(柔宇科技)など、わくわくする最先端技術を生み出すのは中国かアメリカのメーカーになった。

 

かつては世界一位の技術を誇っていた日本のメーカーは、いつから中国に追い抜かれていったのか。本書にはそのヒントが隠されていた。

 

 

中国市場で敗北した日本家電メーカー

1990年代半ばから2000年ごろにかけて、日本の家電メーカーは中国市場で劣勢に立たされていた。それまで蚊帳の外にいた中国国内の家電メーカーが突如として躍進し、日本ははじめ海外メーカーのシェアを奪ったのである。

 

当時の日本の経営者たちは、日本企業が中国企業に敗れた原因を「安かろう悪かろう」の戦略に敗れただけだと高をくくっていた。

しかし実は日本企業の構造そのものに本質的な問題があった。それこそが日本企業の中にある、大きな傲慢と内部構造の闇である。

 

長い間、中国企業のサービスは最低とされてきた。露店の接客態度に関してもお釣りを投げて客に渡すほどだったという。だが1990年代中頃から中国のサービスの質は主に家電メーカーを上昇し、日本をはじめとした外国企業に匹敵するものにまで成長した。

 

一方で日本企業のサービスは頭撃ちどころか、低下しているようのさえ思える。

本社のオフィスに通されるとこれでもかと丁寧な扱いをうけるが、顧客に対するサービスの質は低く、まさに慇懃無礼といった態度である。

 

 

たらい回しにされる日本のカスタマーセンター

これはカスタマーサービスの開業時間からもうかがえる。

日本のサポートデスク(富士通)が平日の9時から17時、アメリカの(DELL)が平日9時から21時間なのに対し、中国のレノボは24時間対応するのだ。(日本法人は9時から18時)。

しかも土日も空いており、クレーム対応には最終的に社長が対応する。

 

日本のカスタマーセンターではよく「たらい回し」にされることが多い。スマートフォンのことについて問い合わせても、通信キャリア、販売代理店、製造したメーカー、アプリの開発元など責任が曖昧だ。

 

レノボのサービスは顧客を待たせることもたらい回しにすることもなく、社長が自社製品に責任を持つという点で好感が持てる。

日本では東海テレビの「不適切放送」の例のように、下請けの社員一人に全責任を押し付けて有耶無耶にしてしまうケースが目立つ。

 

 

IT社会を見通した中国の戦略

中国は2000年代ごろには次世代のIT産業に目を付けて、積極的に投資を行ってきた。

 

『中国電子報』に記されている主要な電子企業の一覧にも、すでに大手だったハイアール、レノボをはじめ、TCL、Huawei、ハイセンス、四川長虹、コンカなど日本でもお馴染みのメーカー名が並ぶ。

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BAT」と呼ばれる3社、百度、アリババ、テンセントの名前はまだない。

ハードウエアやソフトウエアの覇権争いの時期であり、ITを利用したサービスが成熟していなかったからである。しかし当時に日本企業を中国から追い出した家電メーカーたちが、今度は日本市場に攻勢をかけてきているのだから面白いものである。

 

 

徹底した実力主義の海爾

ハイアールの躍進の立役者は徹底した実力主義の社風だ。日本のように年功序列の賃金ではなく、自身が開発した製品の売り上げから報酬が受け取れるのである。

 

しかも新商品開発の依頼は上司から下されるのではなく、社員自らが考える。海外メーカーから市場とは考えられず切り捨てられた貧しい農村に自ら赴き、ニーズを探り当てるのである。一部の日本企業が儲からない農村を相手にしないのとは大きな違いだ。

 

さらにハイアールには驚くべきことに重役を含む幹部社員の評価制度がある。彼らに対しての一般社員の評価が社員食堂に張り出させている。(2000年ごろの話で現在もあるかはわからない)

 

上司が部下を評価することはあるが、部下が上司を評価するなんて日本ではまず考えられない。これが中国企業の経営者や管理職に対する厳しさであり、無責任な経営者を生み出さないシステムなのだ。

 

2021年、日本は中国製品で溢れている

莫先生の書籍が発売されてから20年あまりが立ち、日本と中国の経済的立場は完全に逆転した。

iPhoneは中国の工場で組み立てられ、『TikTok』や『原神』、『アズールレーン』などの中国産スマートフォンアプリは日本の若者に人気だ。

 

パソコンではレノボNEC富士通のパソコン事業を統合し、スマートフォンではOPPOやシャオミが日本で5Gの機種を販売している。

 

自動車産業においても第一汽車の『紅旗』が日本に上陸し、中国製の自動車を日本で見る日もそう遠くないだろう。

 

一方で米中貿易摩擦による制裁によって使い物にならない製品も出てきた。さらには新疆ウイグル自治区内モンゴル自治区、香港、法輪功学習者への弾圧やジェノサイドなど、中国共産党が行っているとされる人権問題には世界中から非難が殺到している。

 

日本は中国という広大で偉大な大国に敬意を示しつつも、こうした問題に対して毅然とした態度で発言し、友好な関係を築きながら、中国製品やアメリカ製品に頼らない産業的な自立を目指すべきあると考える。